OTO の コラム
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2005年

『あの朝』

 兵庫県芦屋市の西法寺で鐘楼の鐘をつかしていました。「音の拳骨(げんこつ)」とでも呼べばいいのか、ぐしゃりと何かをつぶすような音がしました。合掌するときにはもう、もとの静けさに戻っています。鐘の音らしい、尾を引く余韻がない。

ドラム缶の鐘であります。灰色のペンキが塗られた胴に、「阪神・淡路大震災追悼之鐘」と書かれています。あの地震で周辺の住宅は壊滅し、境内は命からがら逃げた人で埋まっています。

お寺で用意したドラム缶が境内に並んだ。倒れた家の廃材を燃やし、湯を沸かしていました。被災者の凍える心をも温めた希望の風呂であったといいます。異形の鐘には語り尽くせない当時の記憶が詰まっています。

6433人の犠牲者一人ひとりに顔があり、声がありました。親がい、子がい、きょうだいがいた。絶たれた夢があった。「一人ひとり」を砂時計の砂に埋没させてはなるまい。音の拳骨が殴ったものは、時間の堆積(たいせき)であったでしょう。

「これはいつかあったこと/これはいつかあること/だからよく記憶すること/だから繰り返し記憶すること/このさき/わたしたちが生きのびるために」。詩人安水稔和(やすみず・としかず)さんの詩「これは」です。

新潟県中越地震とインド洋大津波の戦慄(せんりつ)がさめやらぬまま、心の凍りついた「あの朝」から満10年を迎えた。記憶よ、眠るなと、余韻のない鐘が鳴いています。

     2005.01.17 手帳より

『丘』

 いまも愛唱されている「みかんの花咲く丘」は、1946年(昭和21年)にラジオ放送から生まれました。流れるような曲と、“母なる風景”の目に浮かんでくる詞が、当時の人々の疲れた心を慰みました。

その翌年には、さびしい恋心の歌「港が見える丘」が歌われ、ラジオの連続放送劇「鐘の鳴る丘」が始まりました。哀(かな)しい名曲「異国の丘」はさらにその翌年です。

丘とは――と、作家の橋本治さんが書いています。あたりを一望できる高みは、思い出を遠く見つめつつ、現実から未来へも目を向ける「希望と追憶の場所」である、と。

「やさしい母さん 思われる…」(みかんの花咲く丘)。「あなたを想(おも)うて来る丘は…」(港が見える丘)。そこには橋本さんのいった追憶がありす。「帰る日も来る 春が来る…」(異国の丘)。シベリア抑留者の切ない希望がある◆終戦から六十年になる今年は、たどり来た坂道でふと立ち止まり、来し方を振り返る「丘」の年でもあります。当時の歌を聴いては亡き人の面影をしのび、食うや食わずの遠い日々を重ねる人も多いに違いない。

きのうの「歌会始の儀」で天皇陛下は、苦難をしいられた人々に寄せる思いを一首にこめられています。「戦(いくさ)なき世を歩みきて思ひ出(い)づかの難(かた)き日を生きし人々」。丘のお歌であります。

     2005.01.15  手帳より

『リズム感のある文章』

 山口県萩市立明倫小学校で、全児童が毎朝、郷土が生んだ幕末の志士で教育家でもあった吉田松陰の言葉を声も高らかに朗唱するようになって、もう20年以上になります。

朗唱する言葉は学年ごと、学期ごとに変わります。入学早々の一学期は「今日よりぞ 幼心を打ち捨てて 人と成りにし 道を踏めかし」だ。「凡(およ)そ生まれて人たらば 宜(よろ)しく人の禽獣(きんじゅう)に異なる所以(ゆえん)を知るべし」は3年の一学期の言葉です。

今週から三学期だが、間もなく卒業の6年生は「天地には大徳あり 君父には至恩あり」で始まる少し長い言葉になります。普段は各教室で行うが、学期末には体育館で学年ごとに朗唱します。建物が震えるほど、それは壮観だといわれます。

明倫小のホームページにも、学年、学期ごとの言葉が紹介されています。難解でも「読書百遍、意自(おの)ずから通ず」で、児童にも意味がわかってくる。「卒業生にも何かしら生きる糧にはなっているようです」と校長の吉屋さんは言うかつては当たり前に行われていたことだった。文語調のリズム感のある文章を、大きな声で読むことは、きっと健康にもいいに違いない。音読は脳の活性化につながるという川島・東北大教授の研究結果もあります。

「松陰先生」と明倫小の児童たちは敬愛の念を込めて呼ぶ。長く朗唱を続けてきた先生方にも頭が下がる。

     2005.01.09 手帳より

追伸

午前9時頃、歩いて福祉会館(午前10時開始まで)行きました。会長の挨拶をしてダーツ大会(参加者30名ぐらい)がはじまりました。一回戦は長瀬さんでした。前回(夏)優勝者です。200点(10回投げ)で、4回の時で残り3点、一点を取って、1の倍(2点)をとらないとだめです。狙うのは無理ですね。結果は、一回勝負、真ん中近くに当たられて10a差負けました。今度は県大会を目指します。すみません〜〜。

     おと

『日本の自然』
 四季折々の変化が美しい日本の自然。はるか遠い昔から、人々の暮らしに恵みをもたらしていました。時に牙をむくこともあるが、人々は、かけがえのない遺産をとして守り、受け継いています。21世紀を迎えた今、次代に残すべき各地の自然を見つけましょう。

(1)利尻・礼文・サロベツ原野

 サロベツ原野は東西約7`、南北約28`に及ぶ湿地で、ミズバショウやエゾゼンテイカなど100種以上の花が原生しています。海岸砂丘には、200種を超す鳥が生息しています。利尻、礼文島には、レブンソウ、リシリヒナゲシなど鳥固有の植生が多いです。

(2)知床

 知床半島は、山岳地帯が直接、海に落ち込む厳しい地形で、人を寄せ付けず、オオワシやシマフクロウなど希少種の聖地となっています。冬季に押し寄せる流氷も有名で、毎年接岸する地域としては、世界最南端とされています。

(3)大雪山

 北海道の最高峰・旭岳(2290b)を中心に複数の火山で構成されています。山頂部や稜戦部には、年間を通して永久凍土も見られます。ヒグマやエゾシカ、エゾリス、クロテンなど30種近い動物の生息が確認されています。

(4)阿寒・屈斜路・摩周

 阿寒・屈斜路・摩周のカルテラ湖と、湖周を取り巻くエゾマツ、トドマツなどの森林が織りなす風景が大変美しいです。摩周湖は、透明度が高いことで世界的にも有名です。阿寒湖のマリモは、特別天然記念物に指定されています。

(5)日高山脈

 「北海道の背骨」とも言われる険しい山脈が、南北130`以上にわたって続くます。氷河時代に形成されたU字形の谷「カール」が数多く分布しています。カラフトルリシジミやダイセツタカネヒカゲといった珍しいチョウも生息しています。

(6)早池峰山

 北上山地の最高峰(1917b)で、東西10`以上に及ぶ連峰です。エーデルフイスに似たハヤチネウスユキソウなど固有の植物が多いことでも知られ呈す。ニホンカモシカやツキノワグマ、天然記念物のヤマネなども生息しています。

(7)三陸海岸

 変化に富んだリアス式海岸が、独特の景観を形成います。宮古湾を境に北側は、黒崎、北山崎など、高さ100−300bの大規模な断崖絶壁や岩礁が続いています。南側は長く突き出た半島や岬、入り江が連続し、複雑な海岸線を形造っています。

(8)白神山地

 青森県南西部から秋田県北西部にまたがる約13万fに及ぶ山地総称。中心部の1万7000fが世界自然遺産です。人手が入っていない原生的なブナ林が世界最大規模で広がり、ツキノワグマやニホンザル、クマゲラなど多くの動物の生息がいます。

(9)飯豊・朝日連峰

 ブナ林を中心とする山岳地帯で、冬に吹く季節風の影響を受け、世界有数の豪雪地帯でもあります。出羽三山を代表する月山では、大規模な雪渓が形成されています。ツキノワグマ、カモシカなど大型動物の個体数も多く、分布も広範囲に及びます。

(10)奥利根・奥只見・奥日光

 奥日光には、2000b級の山々が連なり、山間には尾瀬ヶ原や戦場ヶ原といった広大な湿原が広がります。中禅寺湖や尾瀬湖も含み、変化に富んだ風景を形成します。奥利根・奥只見は国内有数の豪雪地帯で、冬季は降り積もった雪による景観が特徴的です。

(11)伊豆七島

 大島や新島、三宅島、八丈島など伊豆諸島の島々から成ります。すべての島が火山活動によって形成され、特に大島の三原山(764b)と三宅島の雄山(775b)は活動が盛んです。固有種のアカコッコなど200種以上の鳥類が生息しています。

(12)小笠原諸島

 父島、母島、硫黄など大小30余の島々から成ります。大陸と陸続きになったことがないため、オガサワラオオコウモリ、オガサワラトカゲ、ムニンボタンなど固有の動植物が豊富に生息しています。「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。

(13)富士山

日本列島のほぼ中央に位置する標高3776bの成層火山です。雪を頂いた雄大な姿は、日本を代表する景観として世界的に有名です。数多くの芸術作品にも登場しています。ふもとに青木ヶ原樹海が広がり、溶岩トンネルや溶岩洞窟も多いです。

(14)北アルプス・南アルプス

 「日本の屋根」と呼ばれ、3000b級の山々が連なる。山間を縫って黒部川、梓川などが流れ、壮大な渓谷を刻んでいます。ライチョウなどの希少種も多く生息しています。上高地、白馬、立山など国内有数の観光地も多く抱えています。
 日本で2番目に高い北岳(3193b)を始め、3000bを超す山を13もあります。仙丈ヶ岳や荒川東岳には、カール地形が見られます。ニホンカモシカやツキノワグマなど30種を超える哺乳類の生息が確認しました。

(15)山陰海岸

 網野海岸(京都府)から鳥取砂丘まで延長75`に及びます。急峻な湾や岬が複雑に入り組み、洞門や岩礁などが続くリアス式海岸が見られる一方で、風紋が美しい砂丘地帯も広がるなど対照的な自然景観が特徴的です。

(16)祖母山・傾山・大前九州中央山地と周辺地

 九州の中央部には、祖母山(1739b)、国見岳(1739b)など1500b級の山々が多数そびえ、高千穂峡などV字形の谷が独特の峡谷美を形成しています。稜線部周辺には、国内では南限のブナ林が広がっています。

(17)阿蘇山

 九州のほぼ中央に位置する活火山です。東西約18`、南西25`、周囲約128`のカルデラは世界最大級とされています。カルデラ中央部には、火山活動中の中岳を始め、高岳、鳥帽子岳などの阿蘇五岳が火口丘群を形成しています。

(18)霧島山

 東の高千穂峰(1574b)と西の韓国岳(1700b)を中心に大小20余の火山群から成っています。大浪池、大幡池など噴火によって形成された火口湖が多数あり、すそ野には、噴気孔や温泉が見られるなど独特な景観を形作します。

(19)屋久島

 周囲130`の島の9割が森林で、中央には九州の最高峰・宮之浦岳(1936b)がそびえています。平野部で年間約4000_、山岳部では約8000_の降雨があります。樹齢1000年を超えるとされる屋久島杉の存在は、世界的にも有名です。

(20)南西諸島

 九州南端から台湾の北東までの約1200`に弧状に連なる。大半が亜熱帯地域に属し、美しいサンゴ礁が発達しています。台風が多いことでも知られています。アマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなど希少な固有種が生息しています。

     2005.01.04 日本の自然